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43話 騎士団長への剣の押し付けと、副所長の動揺

作者: みみっく
last update 最終更新日: 2025-12-03 06:00:03

「あー助かるよ。借りてくね〜♪ あ、でも……借りた剣は、ちょっと……ここまで返しにこれないから……そうだ! セリオスに渡しておくから取りに来てくれる?」

 レイニーは借りた剣を受け取り、城に帰ったらエリゼを送り届けた時に、剣も渡しておけば返してくれるでしょ、と内心で思った。

「……へ? え? いやいや……セリオス様って……騎士団長のですよね?」

 副所長が、顔色を悪くしていた。今更って感じだと思うよ、その娘のエリゼの扱いも雑だったし〜。レイニーは、副所長の反応に内心で呆れた。

「そうそう」

 レイニーは、あっけらかんと言った。

「レイニー様、普通の一般兵が、セリオス様とお話をするのは厳しいかと……」

 副所長が俯き呟いた。そうかな……今は、一般兵の練習を見てるけど? まあ……周りは凍りついた様子になってたが。レイニーは、副所長の言葉に首を傾げた。

「じゃあ、王城の警備部隊に預けておくよ〜」

「はい、それなら問題ないです」

 副所長がホッとした顔で返事をした。その表情からは、安堵の色が読み取れる。

「それと……女性の事務作業員も解雇ね。仕事もせずに楽しいお話で給金を不正に得ていたんだから……あ、それもお父さまに任せるから良いか。俺よりも、厳しい罰を与えると思うから……じゃあね〜」

 それを聞いた女性職員が、青褪めた顔をして座り込んだ。その顔は、絶望に染まっていた。

 ま、自業自得でしょ……所長の権力で従わされていたとしても、給金は税金で支払われてるんだしさぁ。レイニーは、冷徹にそう判断した。

「エリゼを呼んできてくれる? 出掛けるからぁ〜♪」

 兵士たちが慌ただしく動き出し、相手はセリオスの娘だと知ると丁重に連れてこられた。そりゃそうだ、自分たちの遥か上の上官の娘だ。

「エリゼ様、こちらです。足下にご注意を……」

 緊張をして、おどおどしているエリゼを見ていると笑っちゃいそうだった。それにしても、様付けになってるし……。レイニーは、思わず口元が緩みそうになるのをこらえた。

「エリゼ……まさか、緊張してるぅ?」

 レイニーは笑いをこらえて、からかうように聞いてみた。

「お兄ちゃん……うるさいっ。もお……ばかぁ〜。早く移動しよ! ここいやぁ〜。居心地悪ーいっ!」

 エリゼは、レイニーの腕を掴み、その場を離れたがっていた。

♢検問突破

 二人で道を歩いてしばらくすると、デカい壁が見えてきた。王都を覆い敵の侵入を防ぐ役割を果たしているらしい。その壁は、威圧感を放ち、街を守る要塞のようだ。

 検問があり、もちろんレイニーとエリゼは検問に引っかかった。何故なら街の王国軍の紋章の入った警備兵の剣を所持していたから、当然に怪しまれ引っかかった。

「その剣を、どういう経緯で手に入れたのだ?」

 検問兵の厳しい声が響いた。

「警備兵の詰め所の、副所長に借りたんですけど〜?」

 レイニーは、あっけらかんと言った。

「は? そんな馬鹿げた話を信用しろと? あっははは」

 検問兵は、レイニーの言葉を信用せず、嘲笑した。

「ふぅ〜ん……そんな対応をしてて良いのかねぇ〜この子を誰だと思ってるの? セリオス騎士団長の娘さんだよ? しーらないっ♪ ここの隊長さんとも仲良さそうだったけど? にっしし……」

 レイニーは、いたずらっ子っぽい感じで呟いた。その声には、検問兵への揺さぶりが込められている。

 後ろの列から割り込んできた兵士が慌てた様子で検問をしていた兵士に小声で話をすると、検問兵の態度が一転した。その顔は、驚きと焦りに染まっている。

「……すみませんでした。ど、どうぞ、お通り下さい……」

 検問兵は、深々と頭を下げた。

「お兄ちゃんの、ばかぁ……恥ずかしいよぉ〜。もお!」

 エリゼは、そう言いながらレイニーの腕を掴んできた。その顔は、真っ赤に染まっていた。

 隊長さんがレイニー達だけでは、検問を通過できないと気を使ってくれたのだった。放置されてたら捕まってたかもなぁ……。レイニーは、隊長への感謝と、自分の迂闊さに反省した。

「そうそう、隊長さんから聞いたんだけどさ〜。この近くに魔物が現れる場所があるって……どこなのかなぁ?」

 レイニーは、検問兵に尋ねた。

「それは、この細道を道なりに進むと、その森にたどり着きます。そこは、魔物が多数現れる場所で……大変キケンですので、お避け下さい」

 検問兵は、レイニーを案じるように忠告した。

 気配の探索をして進みますか〜。レイニーは、内心でそう呟いた。

「うん。ありがと〜♪」

 レイニーは、笑顔で礼を言った。

♢魔物の森

 門を抜けて、言われた通りに道なりに進むと、怪しい雰囲気の森が見えてきた。その入り口からは、どこか不穏な空気が漂っている。

「うぅ……ここに入るの?」

 冒険者ごっこをしたいと言っていたエリゼが震えて、レイニーの脇腹に手を回して聞いてきた。その声は、不安で震えている。

「冒険者ごっこをするんじゃないの?」

 レイニーは、少しばかり意地悪く問いかけた。

「えぇ……ここじゃないよっ。山だよ? ここキケンすぎるってばっ」

 エリゼが、使命感に燃えているような顔をして注意をしてきた。その瞳には、真剣な警告の色が宿っている。

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